HERO
小学校1年の時、全校生徒の集まる朝礼になると、決まって現れる正義の味方がいた。
その名も
「じゃんけんまん‥」
今思えば、6年生のお兄さん(生徒会長か?)が風呂敷(?)をまとい、全校生徒相手にじゃんけんをしている(負けた者は座っていく)だけなんだけど、とにかく絶大な人気を誇っていた。
彼の特技は「リンゴの皮剥き」!?(じゃんけんまんのくせに)
途絶えさせることなく剥き続けたリンゴの皮の長さを、毎回代わる挑戦者と壇上にて競うのである。
朝っぱらから何やってんだか、この学校は‥ なんて白けた奴などいやしない、全校上げての大盛り上がり!
挑戦者が女の先生の時などは、まさに白熱!(年頃の女教師が負けられんわな‥。負けてたけど‥)
朝礼で先生が言ってることなんて解りゃしないが、みんなじっと我慢して聞いていた。何せ、ちゃんと朝礼を聞かないと「じゃんけんまんはやって来ない」のだから‥。
(この学校の指導者は、かなりの知恵者か‥)
普段のじゃんけんまんは一般生徒に溶け込んでいるのだが、ひとたび「あ! じゃんけんまんの人だ!」と鋭い奴に見抜かれるや、低学年の人垣が出来てしまう。
しかし彼は慣れたもので、「しーー‥」っと口に手を当て、照れたように笑って去る。
そう、今はマントを付けていない。じゃんけんまんの正体は秘密なのだ、たぶん‥。
皆、訳もなく尊敬の眼差しである‥。
メガネひとつで世を欺き続けているアメリカ映画のスーパーマン。
「んな訳あるかい!」の声を聞くたび、このじゃんけんまんを思い出してしまう‥。
判らないんだってばさ、たぶん‥!?
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