侵入者

ある秋の日‥‥(だったと思う)
仕事から帰ってきて、ふと散乱している書類や本に目をやった。
絨毯の上の無法状態の一角(←妙に落ち着く)。
いつもは横目で通り過ぎるのに、その日に限って、どういうわけか、まじまじと見た‥。

 何か出てる‥‥

半開きになった本の間から、鮮やかなグリーンの棒が突き出している。
本といっても、厚さ1センチにも満たないA5サイズのソフトカバー。
そのめくれ上がった表紙の隙間にそれは挟まっているようである。
私はズカズカ近づき、そろ〜っと表紙をめくった(←臆病)。

 ‥‥!!

その「グリーン」の正体を見て、私は総毛立った。

 何‥で‥‥?

慌てて部屋中を見回すが「コイツ」が入り込む隙間なんて無いはずである。
網戸には、たばこのコゲあとのような穴が空いているが、「コイツ」が入り込むのは全くもって無理。
それほどに「コイツ」は巨大なのである。

手の平大の巨大 ショウリョウバッタ !!(こめつきバッタともいう)

胴体なんて男の人の親指並み。
ここまでデカイと気色悪くて手が出せない。
その上、私はカマキリ・コオロギはOKなのに、キリギリスやバッタ系は苦手なのである(たぶん顔が。コオロギとどう違うねん!とか言わないよーに)。
バッタの中でも唯一、許容範囲に属する おんぶバッタと顔は似ているが、図体のサイズが違いすぎる!(って、訳解んないだろうな、この説明‥)
本の間からのぞいていた細い棒(10センチ以上)は、スラリと伸びた「コイツ」のおみ足だったのである!

 どうすべ〜〜‥‥

まさかこのままにしてはおけない。
ちらっとしか見なかったが、足を伸ばしているということは、すでにご臨終あそばされているということだろう。

私は恐る恐る、再び本を開いた。
気持ち悪いくらいに鮮やかな緑色。電気を消したら発光するのでは‥と疑いたくなるくらい。
しかし、表面の柔らか&滑らかな感じといい、死んでいるにしては新鮮すぎる。
一瞬、ゴム製のおもちゃか‥とも思ったが、ここまで精巧なはずもない。第一、そんなものが家にあったらコワイ。

私は、勇気を出して本を手に取った。
すると‥
なんと、死後硬直済みと思われた足がわずかに動いたではないか‥!?

 うきょーーーーーっっ!!!

心臓はバクバク。だが、目は離せない。
どうやら、臨終間際。
まさに「虫の息」でいらっしゃるらしい。

が‥
復活しない!! とも言い切れない!

私は余計な震動を与えぬように、すーりすーりと窓に歩み寄ると、素早く‥

 ポイッ!!

‥‥‥こうして、侵入者(虫やろ!)は去った。(落下のショックなどは考えてはいけない)。
帰ることもかなわず、しおりになってしまった者達(主に小さなクモ)に比べると、ずいぶんマシには違いない。

そして‥‥
今日も辞書に挟まったクモの残骸と遭遇し、あの最大の侵入者を思うのだった‥‥。

「あ〜〜 潰れてなくて良かった‥!」と


にしても、一体どこから‥‥(大汗)



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