にょろり その1


唐突であるが、私とマムシの出会いは保育園児の頃にさかのぼる。
マム氏ではない(念のため)。
あの「まむしドリンク」にされている、逆算角形の頭を持った、茶色いだんだら模様の毒蛇のことである(ちなみに、うちの叔父さんはヤツを粉末にして飲んでいる。そこはかとなく生臭い)。

ハブのいない本州においては、奴こそが毒蛇のキング。
ハブのように、人を熱センサーで感知して襲うようなプレデターなマネはしない。ちゃんと目視確認の後、命だけは勘弁してやるぜ…レベルの毒牙をお見舞いする(毒の回りは遅いので、すぐに病院へGO!)。
紳士的という観点においては、「おうおう! 襲うぜ、咬むぜ、死んじまうぜ〜!」と大々的にアピールしてくれるガラガラ蛇よりは落ちるかもしれない。が、想像するだけでもデンジャラスなガラガラくんと比べるのは少し不憫かもしれない(←どこぞの田んぼで出没したとTVで言ってた。ついに日本上陸かっ!?)。

キングと言っておきながら、私の中のマムシのイメージは、ガンダムで言うところの「ザク!」である(なんのこっちゃと思った方は飛ばし読みして下され)。いぶし銀な存在感を放つ大量生産機、やられ役のくせに何かやらかしそうな、くせ者的雰囲気…… 似ている。
地味さ加減が、使い捨てにされる刺客や忍(しのび)っぽい(意味不明)。

しかも、このキング、滋養強壮のアイドルとして消費されまくっている割には、華やかさに欠ける。「月とスッポン」なんてバカにされているスッポンごときに負けている。
このいま一歩な感じが、マムシなのだ。斎藤道三なのだ。ちなみに信長はコブラなのだ(ますます訳わからん)。
まぁ、ハブ兄貴やガラガラくんだって、酒やら薬やらにされて同じ末路を辿っているんだから、言いっこなしなんだけど……。

けれど、どうして滋養強壮というと毒蛇なのか……。
無毒の蛇の何がいけないのか? 元気一発「青大将ドリンク!」とか「シマ蛇エキス」があってもいいはずだ…(ともに無毒の蛇っす)。

アオダイショウはよく木の上から、有閑マダムみたく人を見下ろしていたりして、マムシにくらべると大人の余裕を感じる。シマヘビだって、逃げ足だけは速い。
以前、シマヘビ同士のケンカを見たことがあるが、懸命に上へ上へと伸び上がって、二匹で背の高さ比べをしていた(蛇のケンカは大体こんなもんらしい)。
街中の、わりと人通りもある場所で、自転車にひき殺される危険もかえりみずの果たし合い…。そのわりには、シャーとかシューとかいう激しさもなく、ただただ背伸びを続けると「のぉん、もう限界っ!」っていうように二匹そろって、ドポーン…とお堀に落ちていった。アーメン。

うーーむ… 確かに彼らからは、元気ハツラツ栄養ブッチギリなオーラは感じない。
けれど、それって、毒だの何だのより、見た目の問題のような……。

シマヘビや青大将のスリムで長〜い感じがダイエット中のOLだとすると、マムシはむっちりと身の締まった元運動部出身のオヤジ(小柄な豆タンク風)って感じ…。
脂ギッシュで、有り余ったエネルギーが毛穴から吹き出してそうである。

しかし、どちらかのエキスを飲めと言われたら、私はOLを選ぶ。間違いなく。
キャー嫌だ蛇〜?とか言いつつも、いざとなったら、ぶつ切りでもなんでもして、平気な顔して食べているのは女の方に違いない。何といっても、このご時世、大切なのは順応性。
細く、長〜く、しぶとく生きるのを目指すなら、やっぱ「青大将ドリンク」だ!

って、何の話だ…。願わくば、一生お会いしたくない彼らについて、何を熱く語っているのだろう。私の保育園時の思い出話はどこへ……。

ってなわけで、その2へ続く



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