にょろり その2
保育園の頃、私は山奥にぽつねんとある社宅に住んでいた。
その為か、色々な動物を見かけたが、ダントツにインパクトが強かったのは蛇である。
初めて見た蛇は、雨上がりの溝を「鯉の滝登り」状態で泳いでいた。
結構な坂道。強い流れに逆らうように、上へ上へと懸命に目指している(ように見える)。そのわりには、あんまり進んでいないのがご愛敬。
こちらにかまっている余裕など全くなさそうだったので、まじまじと眺めていた気がする。
しかし、普段はこうはいかない。
「 蛇 = 危険 」見たら逃げるよう言われている。
なにせ、我が家の裏の薮(やぶ)はマムシの巣。
近づくことさえ禁じられ、いつの間にやら、あのニョロニョロに正体不明の恐怖を抱くようになった。
そんなある日、近所の婦人会館(普通の家)に行っていた母に命じられ、何か忘れ物をとりに家に戻った。
玄関ではなく、鍵の掛かっていない裏口から入ろうとする。
と……
すぐ横で何かが動いた。
そこには洗濯機が置かれている。
とっさに振り返った私の目線の上……
奴がいた。
突如、洗濯機の中から現れ、ユラ〜リと鎌首をもたげたのである。
「マムシーーーーーーーーィイイイ!!」
叫びながら、ダッシュでもと来た道を戻る。
もちろん母から命じられた任務など忘れている。
「かあちゃーん!!」と会館へ飛び込むと、大勢集まっていたオバサマ達がどこか騒然としていた。はっきりいって、かまってもらえる雰囲気じゃない。
私が蛇と遭遇している間、こちらでは巨大ネズミが現れたのだという。
ちぃ、見逃してしまった…。
さておき、家に帰って母に訴えると、洗濯機のフタはしまっていた。
あとは水道用ホースの取り込み口くらいしか入れる場所はないのだが、一体、どうやってこんな穴へ……??
とにかくぅ!
不意打ちなんて卑怯だーーー!!(←位負けしたので悔しい)
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