すぅぱぁ れでぃ その1


無敵の体力を買われてか、無事就職を果たした妹。
恐らく突拍子もないことをしでかしているに違いないが、いつもさりげなくフォローしてくれる親切な先輩さんがいるらしい。
しかし、出会った頃の印象が良くなかったとかで、尊敬しつつも、ちょっぴりわだかまりが残っている様子…。

聞けば…
先輩さんを含む同僚ら4人ほどで、どこぞに食事に行ったときのこと…。
妹は2階の階段のてっぺんから1階のフロア近くまで、豪快に滑り落ちたのだという。

ズドドドドォオオ……!!

と足から滑り落ち、一階フロアに先に降りていた同僚に蹴りを入れてなんとか止まると、ぴょんと立ち上がり、開口一番

「いや〜鍛えてて良かったぁ〜」

そして、1階のお客様がシーーーンと大注目する中、体育会系らしく「お騒がせしました〜」と笑顔で一礼して何事もなかったかのように出ていったのだという。

本人は「いや〜んもう恥ずかしい〜!」状態だったそうだが、ちょっと間違っているぞ、妹よ?

痛がる同僚に「あ、ごめん」で済ますところも大間違い。
相手が体育会系だからよかったようなものの(?)、一般人ならきっと沈没。
説教モードの私に、妹は
「え〜 ○○(←妹)だって、お尻ちょっと痛かったも〜ん」(ちょっとかい!)

ま、それはさておき、先の先輩さん。
妹が滑り落ちてきたすぐ横で、お会計をしていたそうだが、最初から最後までひたすら無言。
「大丈夫か?」の一言もなかったのだという。

「可愛い女の子が階段から落ちたのに、その反応は冷たすぎる!」
というのが、今も妹の胸にしこりとなって残っているらしい……が。

ここは、姉としてきちんと教えてあげなければなるまい。

私は「可愛い」をさりげなく会話に挿入する妹に、噛んで含めるように言い聞かせた。
「先輩さんは、ビックリして声が出なかっただけだ…」と。
先輩さんを含め、文化系の人間にとって、君は野人、猛牛、モンスターなのだと。

この一件。常人の衝撃を、妹の感覚に置き換えると…… そう…。
「車に跳ねられた人が何事もなかったかのように立ち上がり、『鍛えてて良かった〜』と笑っている」
それが君……。

しかし、妹は「アハハハハハ、そうなんだ〜〜!!」と何故か馬鹿ウケ。
いや、ここは笑うところじゃないぞ、妹よ!
普通は、無傷であることを天に感謝するもんだ〜〜!!
打ち所悪けりゃポックリいくんだぞ〜〜〜!!!

すると、
「そうなのねっ! 普通はそうなのねっ! ○○(←妹)って野人だったのねっ」
と妹はちょっぴり反省モード。
思わず「姉ちゃん、ちょっと言い過ぎたよ、悪かったよ…」とこちらも内心、反省。
……と思ったら、
「でも、野人ってちょっと嬉しい♪」(嬉しいんかいっ?!)

しかし、嘘八百入りの私の小言に納得するなんて……。
憎めん奴(はぁと)。




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