許すまじっ! その4
それは中学校の帰り道。
薄暗い歩道を歩いている時のことだった……。
途中で寄ったスーパーのビニール袋をガサゴソ揺らしながら歩いていると、ふとあることに気づいたのである。
2mほど前を歩いているオバサンの挙動が不審……。
背後を窺うように、オバサンはしきりに首を動かしている。
振り向きそうで振り向かない…ギリギリの位置まで首を回したかと思うと、慌てたようにまた元に戻す。
はじめは何の運動?… 肩こりっすか?? と思ったが、どうも様子が違う。
それどころか、その刹那、ピュキーン!!と嫌な予感が過ぎったのである。
もしや………
この私を痴漢と間違えてるぅーーーーーーっ?!!
いや…… そんなハズはあるまい。
私は自嘲気味に心を落ち着けた。
暗いとはいえ、ここは車の通行量の多い道路(そんな、堂々とした変質者おらんやろ?)。
それに……
ふふふふ、何と言っても、今の私は制服姿!
当然、スカート! その上、襟元には、紐リボンを蝶々結びなのである!
いくら、私が男に間違えられることが多いとはいえ、どこから見ても、愛らしい中学生!
心配ナッシング。これで間違えたら、天罰ものだぜ、オバサン…!
ちゅーか立ち直れん……(ま、スカート履いてるのに男と間違えられたこともあるんだけどさ… 号泣)
うーだうだ考えてるうちに、引っ越して来たばかりの社宅が近づいてきた。
社宅へ向かう脇道は、関係者以外立入禁止。このオバサンとも、もうお別れである。
一体、何だったんだろうねぇ……と、オバサンの後頭部を観察しつつ、ガサゴソ歩き続けていると、意外や……。
オバサンは、まるで私を先導するかのように、社宅へ向かう脇道へと左折したのである。
おおぉ、もしやご近所さん?
変なオバサン…などと思ったことを多少申し訳なく思った次の瞬間、私は自分の直感の正しさを再認識させられた。
「ぎぃやぁああああああーーっ!!!」
私が続いて左折した瞬間、オバサンは叫び声を上げて、グルンっ!!と振り返ったのである!
そして、唖然とした表情で、数秒、私を見つめ……
「あ…… あら、こんばんわっ♪」
オホホっ…… と小走りで団地に駆け込んでいった。
我が家の下の階に住む奥様だと判明……。うぬぅ
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