台風一過

私は嵐の前の妖しげな曇天が結構好き（雨降りはＮＧ）。
生暖かい風が豪快に吹きすさび、雲が異常な速さで流れ行く中、「今日は何かが起こりそうな気がするぜ！　フハハハハハハ」と一人ニヒル（？）な気分にひたるのである。

その日も、私は早朝の電車に揺られながら、真っ黒い雲がギャートルズの死神のように猛ダッシュで空を横切っていくのを眺めて、一人盛り上がっていた。
高校の頃から、サラリーマンよろしく往復４時間の通学を強いられていた私（学年一の遠距離通学者）。
いつもなら「ああ、早く一日よ終われ…」と、オジサマ方に押しつぶされながら、屍モードと化しているのだが、この日は違った…！！
この高揚感は一体何なのだ！？
頭の中では何故か「軍艦マーチ」が絶好調で鳴り響いている！（イヤー！）

校門に入る足取りも驚くほど軽い！　油断してると行進気味になってしまうくらい絶好調ー！
しかし、るんるん気分の私の顔を見るなり、クラスメイト達は驚きの声で、

「どうしたんっ！？」

さらに先生は、きょとんとした様子で、

「なんで来たの！？」

　へ？？　何っ？　何故にわたくし、注目の的っ？？？

そう……
あの空を見て、どうして気づかなかったのか……。＠
我が家の周辺地域では「台風警報」が出ていたらしい。

　ぐぁあぁ～　朝は時間ギリギリまで爆睡やっちゅーねん！
　テレビ点ける余裕ないっちゅーね～～～ん！！

心の叫びもむなしく、ホームルーム開始数十秒で、私は強制送還を言い渡されたのだった……。