ホラー その2


職場近くの横断歩道で、ある朝、恐ろしいものを見た。
ひと揃えの男物の革靴が道路の端に――これから横断歩道を渡るかのような格好で、きちんと並べられていたのである。

頭をよぎるのは、飛び降り自殺の現場となったビルの屋上。
そこに、きちんと揃えて残された靴―― (ドラマ見過ぎ)。
横断歩道が、まるで天国への階段(つーか、はしご)に見える……。
幸い靴の周辺に「遺書」は見あたらなかったが、同じ職場の目撃者達と「借金苦?」「リストラ?」などと自殺の原因を推理しあう(※ 自殺者が出たという情報は一切ないのに…)。

そして、翌日――
得体の知れない不気味さと、勝手な同情を抱えながら、横断歩道を横目に出勤。
あの怪しげな靴はすでにない……。
そして、朝っぱらから「アレ、なんだったんだろーねぇ?」と、またもや雑談に花を咲かせていると、予想外の最新情報が耳に飛び込んできた!

「あの靴、○○さんのだってーー!!」

 ―― はァ?
おそらくそれを聞いた私達の表情は、靴を発見したときよりも、怪訝そうに間抜けてに違いない。
○○さんは、どこかお調子者のお兄さん(同僚だが良く知らない)ではあるが、奇行をはたらくようには見えなかった。なのに……。

 一体、彼に何が起こったのだ!!??

こんな身近に「犯人」がいたことにミラクルを感じる私であったが、現実は「お母ちゃんが聞いたら、泣くでぇ…」だった。

「○○さん、酔っぱらって、タクシーに乗るとき、脱いじゃったんだってー!」

って、あんたは、生まれて初めて蒸気機関車に乗った明治時代のお人かぁーーー!!(細かいツッコミ)




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