同志よ…
ある夏の日、突如降り始めた豪雨の中、駅に向かっていた私。
凄まじい風圧に、傘なんてほぼ役立たず。
横殴りの雨が、白い霧のかたまりみたいになって、道路の上を流れていく。
駅に着いたときには、腰から下は完膚無きまでに(?)ビチャビチャ。
いやーん、パンツが ちべたぁーーい…という、乙女にゃ恥ずかしい状態に陥ってしまった。
もちろん、靴も中まで水気たっぷり。
ホント、水虫になったらどないしてくれるねん〜〜!?
しかし、私の怒りが天に届いたのか、駅に着いたとたん、さっきまでの豪雨は何だったの!??…という勢いで空は晴れ間を見せ始めた。
雲の隙間から洩れる光の帯は、まるで天使が降ってくるかのようにビューチホーだぜ、このやろう。
一方、ホームの上には、ぼたぼたの髪の毛をハンカチで押さえつつ、どよ〜〜んと虚ろな眼差しを落とす集団が……。
あぁ、天国と地獄だわ……(号泣)
さておき、到着した電車に乗り込む、しょぼ濡れたみすぼらしい集団……。
周囲からは、どことな〜くいたわりを含んだ視線が降り注ぐ。
それから十数分後――。
急行の止まる大きな駅に着くと、濡れねずみ集団のほとんどは下車して行ってしまい、私も乗り換えるべく、向かいのホームに立った。
ああ… 真夏の抜けるような青空……(晴れたら晴れたで、なんか腹立つ)。
徐々に周囲に人が増え始める中、ふと、私はあることに気が付いた。
だ〜れも傘持ってないやん!?
きっとここにいる乗客達は、私が「雨にもマケズ〜」とジリジリ歩いている時、家で寝っ転がってテレビでも見ていたに違いない!
それとも、「今日はこっちのスカートにしょうカナ? ウフ」とか「おかん、メシメシー」とか言っていたのかっ!?(エエやん別に…)。
うぬぬぬぬぬぬ〜〜っ…
心持ち乾いてきた気はするが、何故、こんな晴天の中、私はしっとり濡れた服を身につけ、傘を握りしめているのだーーっっ!!?
うふふ〜〜…っと、ヤケになって空を見つめていると、後方から現れたオジサンが、そっと私の横に立ち、呟いた。
「凄い雨でしたね……」
オジサンは傘を持っていた――。
そればかりか、スーツのあちこちが水を含み、段だら模様に綺麗に色分けされている。
目が合うと、どちらから…ということもなく、小さく笑った。
「大丈夫ですか……?」と気休めを言ってみる私に、
「君こそ大丈夫? あ、若いから心配ないか。はっは……」
と、オジサンは一人ごちたように笑い、どことなく満足げに空を見上げた。
いや、心配してくれよっ……!
心の中で小さくツッコミながら、何だか私も嬉しくなって、オジサンと同じ空を見る。
無条件で分かり合えたような、心が通じ合ってるような、不思議な感覚――。
はっ、もしやこれがニュータイプの感応力かっ!?(意味不明)
その後、無事に大学へ辿り着き、靴下の下にローソンのビニール袋を履いていた私(足がふやけてきて気持ち悪いんだもん)。
歩くとシャカシャカうるさかった……。
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