冷気


学生の頃、プレハブ小屋で発掘のバイトをしていた時のこと。
真夏の休憩時間のアイドルといえば、部屋の隅にドドーンと置かれた業務用クーラー様。巨大で無骨な外見だが、これがなかなかに良く冷える。
よく見れば、吹き出し口からは、微か〜に白い冷気のようなものが漂い落ちているではないか!

 おおう、冷凍庫並みだよ、アンタ!

私と友人達は、お寺で線香の煙を頭に擦り込むように、その冷気をありがたーく頭に浴びまくった。

数日後――
クーラー様にご恩返しすべく、フィルター掃除に勤しむ私達。
その溜まりに溜まったホコリが、クーラー様の頑張りを象徴しているかのよう……。

 さぁ、綺麗になって再起動だっ!!

いつものように、吹き出し口で冷気を待つ私達。
しかし、いくら待っても、白い霧のような冷気は降ってこない。
何故っ!? 風量はいつにも増して絶好調で、キンキンに涼しいのにっ!?
嫌な予感が閃光のようによぎり、私達はうぎゃ〜と頭を抱えてもんどりうった。

冷気の正体――
それは、フィルターで除去しきれずに溢れ出した「ホコリ」だった……。




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