(今回も、はしょるともったいないので、ロングバージョン。メルマガと同様、3回に分割しております!
 ペルセウスのように、つなげた方が良かった??)

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▼ テセウス (大ボケ英雄・青雲編)

 父を訪ねて三千里……(大嘘)


 ギリシア神話上、かなり有名な英雄。アテナイ王アイゲウスの息子。実の父は海神ポセイドンってな説もある。

 旅の途中、ある国の王女と結ばれたアテナイ王は、自分の剣とサンダルを大岩の下に隠し、「もし息子が産まれて、この岩を持ち上げられるようになったら、わしの所に来るように…」と言い残して去った(無責任なオヤジぢゃ…)。

 立派な青年に成長したテセウスは、このことを知ると、軽々と大岩を持ち上げて剣をゲット。一路、アテナイへと向かう。
「海路は安全。だが! 俺は英雄になる男!! デンジャラスな陸路を選ぶのさぁぁあ!!」
 と、テンションの高いテセウスは、危険だらけの陸路をあえて選ぶ。

 そして、テセウスの期待通り(?)、道中は山賊のオンパレード。
 気合い十分のテセウス!
 まずは、棍棒で旅人を殴り殺していた男を、その棍棒で撲殺(※1)。
 次に、曲げた二本の木に旅人を縛り付け、その木がまっすぐに戻ろうとする反動を使って旅人の体を引き裂いていた怪力男を、同じ方法で瞬殺。
 さらに、「俺の足を洗いな!」と自分の足元にひざまずかせた旅人を崖下に蹴り落とし、ペットの大亀くんの餌にしていた男を、逆に蹴り落として亀くんの餌に…。
 つづいて、旅人をベットに寝かせ、ベットよりも体が長いと足をちょん切り、短いと無理矢理引き延ばして殺していた男を、同様の手口で冥土へ送ってやる。

「お前のしてきたことを思い知れっ!」ってのがポリシーなのか、きっちり同じ方法で処刑しているところが職人的こだわり(?? ※2)。

 さておき、無事にアテナイにたどり着いたテセウスは、正体を明かさぬまま、父アイゲウスに会うのだが、ここで新たなる敵(!)登場〜!
 アイゲウスの妻になっていた魔女メディアがテセウスの正体を見抜くと、自分の権勢を奪われることを恐れて、「あやつは、この国を奪いに来た悪しき者ですわっ!」とアイゲウスにチクったのである。
 メディアにうながされるまま、テセウスに毒入りの酒を勧めるアイゲウス。しかし、テセウスの持つ剣に気付くと慌てて酒杯をはたき落とし、
「おおう! マイ サ〜〜ン 〜〜♪」
 たくらみのバレたメディアは逃走。
 こうして、無事、父との再会(?)を果たしたテセウス。能力の高さは折り紙付きだが、英雄としての名声を一気に高めるのは、次回(立志編)にてーーー!


 ※1以降、この棍棒はお気に入りアイテムとなる

 ※2 この他にも、雌豚だか女盗賊だかを退治したり、旅人を殺しまくっていた格闘家の王様を殺し、ちゃっかりその国の王位までゲットしたりしている。
    また、アテナイ到着後にも、近隣を荒らしていた雄牛を生け捕りにし、アポロンに捧げたり…と忙しい。


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▼ テセウス (大ボケ英雄・立志編)

 父ちゃん早とちりだってばさ……(by 若いのに健忘症)


 自称「英雄になる男」テセウス。まだ見ぬ父、アテナイ王アイゲウスに逢うべく、危険な旅路を選んだ彼は、並み居る山賊どもをぶちのめし(つーか抹殺)、見事アテナイに入城。父との再会を果たしたのだった。(以上、前回のお話)

 再会もつかの間、再び危険な旅路に出るというテセウス。
 その目的を聞いた父王は青くなって震え上がった。
「頼む、やめてけろ〜〜!! ミノタウロスを退治するだなんて、おめ、死んじまうど〜! ありゃ、頭が牛の化け物じゃて〜〜!」

 この頃、アテナイはクレタ王ミノスとの戦に負け、恐ろしい賠償を払わされていた。
 毎年、クレタ島の怪物ミノタウロスの生贄にする為に、最も美しい男女を7人ずつ差し出さねばならなかったのである。
 テセウスは自ら生贄に加わってクレタへ渡り、怪物を倒すつもりだという。
 その決意の固さに、父王もついに折れ、泣く泣く、ひとつだけ約束をさせた。
「ダディは毎日、海を眺めて、おめの帰りを待っとるからなぁ。もし、おめが無事に帰ってこれたなら、船の帆の色を白に変えて、ダディを安心させとくれよぉ…」(※1)

 てなわけで、クレタ島にご到着の「アテナイ生贄」様御一行。
 テセウスはミノス王に生贄の廃止を求めるが、当然、聞き入れてなどもらえない。
 一方、自信過剰のテセウスを怪しんだミノス王は、「実はポセイドンの息子である」と主張するテセウスを試すべく、自分の王冠を海に投げ入れ、取ってくるように命じた。海神の息子なら海が怖いはずもあるまい…という理屈である。
 ポセイドンに祈るや、海に飛び込むテセウス。溺れるどころか、海中で呼吸出来るかのように潜り進み、見事、王冠を拾い上げた。
「ふーん、ここ海底浅かったっけ…」(ぽつり…)
 ミノス王はこの危険な若者をミノタウロスの生贄にすることに決定した。

 しかし、さすがは英雄を目指す男! しっかり、救いの手が現れる。
 男前なテセウスに一目惚れしてしまったミノス王の娘、アリアドネである。
 ミノタウロスが棲んでいるのは、一度入ったら二度とは出られない迷宮(ラビリントス)。アリアドネは一振りの剣と糸を巻いた玉をテセウスに手渡すと、迷宮から抜け出す方法を教えた。
 そして、テセウスは教わったとおり、糸の先端を迷宮の入り口に結びつけると、糸玉を手に迷宮を進み…、激しい格闘の末、なんとかミノタウロスを退治(おおっ、強いのね!)& 糸を辿って迷宮を脱出!
 仲間を救出すると船を奪い、アリアドネを連れて、クレタ島からおさらばした。

 と・こ・ろ・が……。
 恩知らずなテセウスはアリアドネに飽きたのか、途中に立ち寄ったナクソス島に彼女を置き去りにしてしまう(※2)。
 その上、絶好調に浮かれていたテセウスは、無事にアテナイに帰ってきたら「白い帆」をあげるという父王との約束を忘れていた。
 その為、船の帆が黒いままなのを見た父王アイゲウスは、テセウスが死んでしまったと思いこみ、絶望して海に身投げし、ご臨終あそばしたのである(※3)。

「ダディも、すぐに行くずら〜〜(号泣)」 チャッポーン!

 そんなこんなで、テセウスは王位を継承すると、周辺の諸都市を統合して、アテナイを主都とする国家を建設してゆくのであった!(おおぅ、英雄っぽい!)

 ……徐々にそのスットコドッコイぶりを発揮し始めたテセウス。
 次回、斜陽編に続くっす!


 ※1 生贄を運ぶ船は、帆を黒くしていたらしい。

 ※2 アテナ女神の「アリアドネを置いてすぐに島を出よ」という神託を受けたから…という説もありんす。
    アリアドネについては、また〜!

 ※3 アイゲウスが身投げした海は、後にエーゲ海と名付けられたそーな。


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▼ テセウス (大ボケ英雄・斜陽編)

 落下速度MAX… さすが俺様(ふっ)


 見事、クレタ島の怪物ミノタウロスを倒し、名実ともに英雄の仲間入りを果たしたテセウス。周辺の諸都市を統合して、アテナイを主都とする国家を建設! しかし、余はまだまだ御不満ぢゃ!(前回のお話)

 てなわけで、英雄として一気に高みまで上り詰めたテセウス。もう走り始めたら、止まらない。
 その後の、彼の冒険で有名なのは「アマゾン遠征」。
 憧れの英雄ヘラクレスから「アマゾン族、倒しに行かへん?(※1)」とお誘いを受けたはいいが、女好きのテセウスはアマゾン軍の隙をついて女王の娘を誘拐する。
 これに怒ったアマゾン軍が、テセウスを追いかけアテナイに侵攻。
 どう考えてもテセウスの方が悪いんだけど、しかし、そこは英雄、見事アマゾン軍を撃退し、ますます名声を高めるのであった(勝てば官軍!)。

 しかし、そんな英雄・テセウスを試してやろうと、テセウスの所有する牛の群を連れ去ろうとする青年がいた。ペイリトオスという若き王である。
 しかし、ペイリトオスは撃退しに現れたテセウスの姿を見るや、戦うどころか、うっとりと手を差し伸べ…
「さぁ、僕に判決を下してくれ! 賠償は? 君の望みは何だい?」ほわ〜ん
「君との友情さ」爽〜〜
 と、二人とも一目でお互いを気に入り、親友となってしまった(何だかなぁ…)。

 テセウスはその後も、ケンタウロス(※2)を本土から追放したり…順調に英雄人生を歩むかに見えた ……のだが、坂道(それも直滑降)は一寸先に来ていた。
 ここからは、女癖が悪くても怒られないのは神様だけ……という良い見本。

 アマゾン族から誘拐してきた妻が死んだのを幸いに、新妻をゲットするテセウス。
 それも相手はクレタ島のミノス王の娘パイドラ。ミノタウロス退治の際、さんざん世話になったあげくにポイ捨てした王女アリアドネの妹である(あ〜あ)。
 このパイドラ、あろうことか義理の息子(アマゾン妻の子)であるヒッポリュトスに恋をしてしまうのだが、彼に拒絶されるや、
「私、ヒッポリュトスに誘惑されてましたの!」とテセウスに告げ口して自殺。
 新妻にメロメロだった親父・テセウスは息子を殺すようポセイドンに願い、哀れヒッポリュトスは旅の途中、ポセイドンの放った怪物に襲われて死んでしまった(おい〜〜っっ)。

 そんなこんなで、さすがのテセウスもショッーークを……受けなかったらしい。
 またも妻が亡くなったのを幸い、新妻探しに乗り出す(えんや〜こ〜ら)。
 親友ペイリトオスとの協議の結果
「どうせならゼウスの娘がエエんやな〜い?」ということに落ち着いたらしい。
テ「ほな、俺、ヘレネちゃんね」(※3 将来絶世の美女。ちなみにまだ子供)
ぺ「んじゃ、俺は冥界の女王ペルセポネかな〜」(※4 当然、人妻)
 と、神をも恐れぬお気楽コンビは、速攻ヘレネを誘拐すると、続いて冥界にGO!

 すると…… 冥界の王ハデスが出てきて「まぁまぁ、まずはお座んなさいな」などと、何故か物腰柔らか。
 思わず「どーも、どーも」と腰掛ける二人。
 疑いもせず「忘却の椅子」に座った二人は「何しに来たんだっけ〜」と記憶を無くし、そのまま大岩にくくりつけられてしまったのだった(あほ過ぎ…… T◇T)。

 その後、所用で冥界に来ていたヘラクレス(※5)に助けてもらったテセウス。
 地上に戻ってみると、新妻ヘレネちゃんは取り返され、仕返しとして自分の母親まで連れ去られている。
 そればかりか、なーんと王位まで政敵に奪われているじゃん!?
 こうして…… すっかり人心を失ったテセウスは、逃亡先の島でも厄介者となり、崖から突き落とされ御昇天あそばされたそーな(ふーんだ、悔いなしじゃもーん。ヘレネちゃん以外…)。


 ※1 一族全員が女、それも戦士というデンジャラスな部族。弓が引きやすいように、右の胸を切り取っているらしい…(汗)
    テセウスにさらわれたのは女王の姉妹…という説もあり(しかし、名はアンティオペーらしい)。

 ※2 頭から腰までが人間で、その下は馬の胴体を持つ、半人半馬の怪物のこと。
    ケンタウロス族は、乱暴で好色と言われている

 ※3 後にトロイア戦争の原因にもなった、まさに傾国の美女。

 ※4 ペルセポネの回参照〜!

 ※5 十二の難行の一つ。ケルベロスを生け捕りにする為にきていた。
    ペイリトオスを救おうとすると大地が揺れるなどしたので、結局、テセウス一人しか救えなかった。


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