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▼　パエトン

　真っ逆さぁ〜まぁに〜〜ぃ♪


　パエトン少年は太陽の神ヘリオス（※１）の息子。
　「あなたのパパはあの太陽よ！」そう母親に言い聞かされて育ったパエトンは、このことをとても誇りに思っていた。
　ところが、ある日……

友「はん！　君が太陽神の息子だって〜？　証拠は？　どうせ嘘なんだろ？」
パ「嘘じゃないよ！　パパはあの太陽だ！」
友「だーかぁらー、証拠がないと信用できないって言ってるの〜」
パ「そっ、それなら明日、パパにお願いして僕が太陽の馬車を走らせるよ！」
友「はぁ〜？　本当に乗ってるかどうかなんて確かめようがないだろ〜？」
パ「じゃあ君の家の真上に来たら、馬車を接近させてやる！　なら分かるだろ？　いいな、明日だぞーー！！」

　パエトンは太陽神である父にあったことはまだなかったが、友人達に嘘つき扱いされて、ついつい墓穴な約束をしてしまった。
　しかし、ブチ切れモードのパエトンは、事実を確かめるべく、太陽の住むという東の果ての宮殿を訪ねたのである。そして……

ヘ「HAHAHA〜　その負けん気の強さはワシ譲りネ〜！　間違いなくユーはワシの息子ヨ〜！」（暑苦しい父親や…）
　ヘリオスはパエトンをあっさり息子と認めると、訪ねてきた理由を聞き、息子である証拠に何でも願いを叶えてやろう……と誓いをたてた。
パ「やった！　なら、一日だけ！　太陽の馬車を僕に操らせて！」
　なんですと…？？？　その瞬間、ヘリオスの顔色が変わった。

ヘ「NOOOOーーーーーーっっ！！！　それだけはノーよ！！　あの馬達はワシでも御するのがやっとの暴れん坊なのヨ！　ユーも黒コゲ、地上も黒コゲヨー！」
パ「約束したじゃん！」
　一度誓った約束は破れないのが神様。ヘリオスは思いとどまらせようと、何度もパエトンを説得したが受け入れられず、しぶしぶとパエトンを太陽の馬車に乗せた。

ヘ「進路は馬が知ってるネー！　ユーは大人しく手綱を握ってるだけでいいのヨー！」
　ところが、ヘリオスの取り越し苦労だったのか？　かなり気が荒いと聞かされていた馬達は、灼熱の息を吐き、炎のたてがみをなびかせながら大人し〜く順調に天を駆けている。
パ「あはは、僕って御者の才能あるのかも〜！　そうだ、この僕の姿を皆に見せてやらなくっちゃ！」
　調子に乗ったパエトンは、友人の鼻を明かすべく、地上へと馬車の進路を変えようとした。
　ところが！　これがいけなかった。御者がいつもと違うことに気が付いた馬達が、突如、大暴走を始めたのである。

　神がやっとのことで扱っているこの馬車、たかが子供のパエトンの手に負えるわけがない。
　馬車はメチャクチャに走り回り、地表に近づいては大地を火だるまにし、上空に向かっては天を焦がした（※２）。
　地上に沸き起こった悲鳴に気づいたゼウスは、このままでは世界が滅びる（大汗）…と、やむなく雷光でパエトンを撃ち殺したのある。

　馬車から放り出され、火の玉となって真っ逆さまに落ちていくパエトン（馬はとっととお家に帰った）。
　パエトンの無惨な亡骸はエリダヌス川に受け止められ、パエトンの姉妹は彼の死を嘆いて、この川のほとりでポプラの木に変じた（姉妹の流した涙は琥珀（こはく）となって、川底に沈んでいるという）。
　そして、息子の死を悲しんだヘリオスの願いで、エリダヌス川は天に上げられ星座（エリダヌス座）になったという……（※３）。


※１　ヘリオスはアポロンの前の太陽神。
　　　また、パエトンの父をアポロンとする説もある。

※２　この際、地上に近づいた太陽に焼かれて、エチオピアの民は肌が黒くなり（ご、強引な…）、干からびた地はサハラ砂漠になったんだそーな。
　　　他に、ゼウスが地上の火を消すために洪水を起こした説や、太陽が天空高く昇って離れていった際に地上が凍り、次に戻ってきたときに一気にその氷が溶けて洪水になった…てな話もありんす（どっちにしても迷惑な…）。

※３　パエトンの親友のキュクノスが、川に沈んだパエトンの亡骸を延々と探し続けていたので、これを憐れんだゼウスが、キュクノスを白鳥に変え…それが白鳥座となったという説もある（白鳥座の別説）。


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