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▼ 名物スポットにいらっしゃ〜い♪(その3)

 秘密兵器製造工場 ―― エトナ火山


 愛の女神アフロディテの暇つぶし企画「神話世界一周旅行」に付き合わされるハメになった貴方。
 宴会場と化したゼウスの宮殿で呆然としていると、天界の苦労人・鍛冶の神ヘパイストスが話しかけてきたよん!…ってことで、今週も行ってみよ〜!


 ヘパイストスの館に向かうべく、大広間を後にする貴方とヘパイストス。
 すると、黄金の体を持つ美女が二人、どこからともなく現れると、足の悪いヘパイストスを両サイドから支えるように歩き出した。

ヘパ「おう、おめ達、うちさ帰るどぉ〜。すまねぇな、お客人。こいつらはオラの作った『お手伝いさん 1号、2号』だぁ。驚かんで ええ」(※もちろん名前は嘘です)

貴方「作ったんですか!??」

 目を丸くする貴方に、黄金のお手伝いさんが金色の笑顔を投げかける。

ヘパ「んだ〜。ただのからくり人形でねぇど、いぐらかの知力も与えてあるでなぁ。オラの娘みてぇなもんだぁ」

貴方「そういえば、どことなくアフロディテさんに似てますね」

ヘパ「んだか〜?」

 照れたように口ごもるヘパイストス。ふと、何かに気付いたように貴方を見つめる。

ヘパ「おお、ところでうちの嫁ごさ、どうしただ? おめぇさんの案内ばアポロンに押しつけて、何しとるだか…?」

貴方(ぎくっ!! 言えない……。軍神アレス(※愛人)とデートに行ったなんて言えない……)

ヘパ「お客人、霊体ながら、急に顔色が悪ぅなったのう? ……うちの嫁ご…… また、浮気だか?」

貴方(ギクぎくっ!!)

ヘパ「んだか〜浮気だかぁ。ハァ……。ああ、気にせんでええ〜。いつものことだぁ〜。けんど、たまぁ〜にお灸ば据えてやるのも、亭主の務めだぁ〜。館はすぐそこだども、良けりゃぁ仕事場の方へ行ってもかまわねぇだか?」

 怒っているのか気にしてないのか全く読めないヘパイストスの表情(ある意味コワイ)。
 貴方はもはや、うなずくことしか出来ず、言われるがまま二輪の馬車に乗り込むのだった。
 雲の門を抜け、恐ろしい速さで地上へと向かう馬車……。

ヘパ「はっはっは……、どうも天界の館は落ち着かんで、いつも仕事場の方へ入りびたっておるんだぁ。ほぉら、あそこさ火山が見えるべ? エトナ山だぁ。テュポーンちゅう とんでもねえ怪物があの山の下に封じられとってなぁ、奴の体から吹き出す火炎がエトナ山を噴火させおるんだぁ…(※1)」

 と、言うやいなや、燃えさかるエトナ山の地底に突っ込んでいく馬車。

ヘパ「オラの仕事場はこの山の地下だぁ。燃えたぎる灼熱の炎は天然の溶鉱炉…鍛冶の仕事には最高の場所だべ〜」

貴方(あらかじめ死んでなきゃ、焼け死ぬところ〜〜! 大汗)

 辿り着いたのは、地下深くに作られた大工房。そこかしこに色々な武具や発明品が積み重ねられている。

ヘパ「まぁ、くつろいでけろやぁ〜」

 ヘパイストスの声と同時に、椅子やテーブルがトコトコと貴方の周りに集まってきて、いつの間にやら もてなしモード(ディズニーワールド状態)。
 そこに、羽のついたサンダルを履いた若々しい神が駆け込んでくる。

ヘパ「どうしたぁ、ヘルメスでねか?」

ヘル「やぁ、ヘパイストス! めずらしいねお客人かい? ああ、アフロディテが商店街の福引きゴッコとかいって、何やら企画を立ててたね。『世界一周旅行』だっけ? 君がその当選者かい、ご愁傷様。僕に出来ることがあったら手伝うよ、何でも言って」

貴方(「福引きゴッコ」…… ずーん)

ヘパ「相変わらずせわしない男だべぇ…。お客人、こいつは神々の伝令役のヘルメスだぁ。泥棒の神とも言われてるべさ…(ニヤっ)。ほれ、見せてみろ、サンダルの調子が悪いんだべ?」

ヘル「さすが名工、一瞬で見抜くねぇ! ほら、羽の部分の動きが悪いんだ」

ヘパ「羽は飾りだぁ〜。飛ぶことには支障ねえ。けど、ずいぶん使い込んだだなぁ? 新しいのさ作ってやるから、持ってけ〜」(※ 実際の羽の機能は知りません〜)

ヘル「まったく気がいいねぇ。だから、皆に『なんでも屋』扱いされるのさ」

ヘパ「好きな仕事ばして喜んでもらえるなら、言うことねぇべ〜。ちょっくら待っててけれ、新しいのさこしらえるよう、キュクロプスらに言ってくるからよぉ(※2)」

 お手伝いさん1号に手を引かれ、カーン…コーン…と高い金属音のする方へと消えていくヘパイストス。

ヘル「どれ、俺達も工房を見に行こうか。君、キュクロプスは見たことあるかい? 額の真ん中に、まぁるい大きな目が一つある巨人のことさ。見た目と違ってとても器用で、ゼウスの雷やポセイドンの槍も奴らが作ったんだ。その腕を見込まれて、ここでヘパイストスの助手をしてるって訳だけど……」

 足音一つ立てず、するするっと幾つかの部屋を抜けていくヘルメス。
 最後に覗き込んだ大きな部屋では、真っ赤に燃える炉の前で、三人の一つ目巨人がアツ〜く熱した金属を地道にハンマーで叩いている。

ヘル「ひゃ〜 相変わらず熱い所だよ全く。見なよ、あの金の塊が、見事な靴になるんだぜ。神々はあの靴を履いて、空中や水上を風のように速く移動するのさ。ついでに、向こうに積んである青銅の蹄鉄(ていてつ)を付ければ、神々の馬車を引く天馬の出来上がり。そういや、アポロンやアルテミスの弓矢もここで作られたんだっけ…」

ヘパ「なぁーにをコソコソ覗いとるんだぁ? ほれ、そう言えば、おめぇの為に新しいサンダル作っておいたの忘れてたべ。これが、最新モデルだぁ。速ぇえどぉ、気ぃ失って、鳥さぶつかんなよぉ〜」

 新しいサンダルをぶら下げて、背後から現れるヘパイストス。

ヘル「やっぱ俺って、実験体だろ……」

 苦笑するヘルメスの背中を、ヘパイストスがドンと叩く。

ヘパ「不死身だべぇ? ニカッ」

ヘル「へいへい、有り難く頂戴します。それじゃあ、今から冥界に亡者達連れてくんだけど、君も来る?」

貴方「え??? もしや成仏させてくれるんですか……」

ヘル「いやぁ、それはまた今度。君を連れてきたのはアフロディテだからね、勝手に成仏させられないよ、後がコワイし。成仏したけりゃ、とっとと世界一周し終えるのが一番さ!…ってわけで、冥界なら俺と行くのが最善だと思わないか、ヘパイストス? どうせ誰かが案内することになるんだろ?」

ヘパ「んだな〜。間違ってケルベロス(※地獄の番犬)にでも喰われちゃ目も当てられねぇもんなぁ…。どうだぁ、お客人、オラもそうした方がエエように思うんだが? もちろん、全部済んだら、ちゃーんど生き返れるよぉ、オラも手さ尽くしてみるだぁ。ほんどにすまねぇなあ、うちの嫁ごが…」

貴方「ヘパ様…… ホロリ」

ヘパ「嫁にゃ、きっちりお灸ば据えるでなぁ、ある新兵器で……」フッフッフ

貴方「ヘパ様…… (怖い…)」

ヘル「じゃあ決まりだな。早速、出発しようか! 行くよお客人、俺につかまって」

貴方「あれ、つかめる? アポロンの手はすり抜けたのに……」(←※勝手な設定)

ヘル「俺の仕事の一つは、冥界へ死者を連れて行くこと。これくらいは当然さ!」

ヘパ「んだば、気ぃつけてなぁ。頼むどヘルメス、新しいサンダルさ慣れるまでは、ゆっくり飛ぶんだどーー!」

ヘル「へいへい。わかってるって。それじゃあ、レッツゴーぅうううううーーーー!!?? ととととっ止めてぇくれええーーーっっ!!」

 ちゅどーん!!

 キラーーン………

 一気に加速して、お空のお星さまとなって消えるヘルメスと貴方。
 ふぅ……と重く溜め息を付くヘパイストス。

ヘパ「心配だべさ……」


 ……ってことで、次回へ続くのだぁ……


※1 テュポーンの回参照

※2 キュクロプスの回参照

※3 ヘルメスの回参照〜!


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