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▼ 名物スポットにいらっしゃ〜い♪(その10)
暗いのは地下だから! ―― 冥界 その7
愛の女神アフロディテの暇つぶし企画「神話世界一周旅行」に付き合わされるハメになった貴方。
神々の伝令役ヘルメス神の案内で、今週も冥界観光に行ってみよ〜!
大半の亡者達が送られるという『アスポデロスの野』を後に、次の目的地へと飛び立ったヘルメス神と貴方。
ヘル「それじゃぁ、次は『エリュシオン』か『タルタロス』か…… どっちから先に攻めようか〜…」
貴方「エリュシオン? それって、アポロンから聞いたような……。たしか、神々から特別に愛された人間が行くってところですよね……(※1)」
ヘル「そ、幸福の野・エリュシオン。ほんの一握りの者達だけが入ることを許された楽園さ。ホント、狭き門なんだぜ〜。あのアキレウス(※2)やヘラクレス(※3)といった有名な英雄でさえ、さっき行った『アスポデロスの野』に送られてるんだから」
貴方「へぇ〜 じゃあどんな人ならエリュシオンに入れるんです?」
ヘル「そーだな〜 天才音楽家のオルフェウスは知ってるかい?(※4)」
貴方「死んでしまった奥さんを冥界まで取り返しに行ったって人ですよね?」
ヘル「そ、結局失敗したんけど、死後には愛しい奥さんと再会を果たして幸せに暮らしてるらしいぜ。そうそう、トロイア戦争の原因を作った絶世の美女ヘレネ…彼女も旦那と一緒にエリュシオン入りしてたな〜」
貴方「えー? 戦争の原因を作った人なのに?」
ヘル「ま、彼女の場合は神(こっち)の都合で操られてただけだからね……。何より美人だし〜」
貴方「うあー、やっぱりそういう選考基準…?(^^;)」
ヘル「一応、英雄と呼ばれるに恥じない高潔な者達が選ばれてる…はずなんだけどね。ともかく、一年中、西風が穏やかな風を送りこみ、蜜のように甘い果実がそこら中になって、食べ物の心配もない。冥界の裁判官の一人・ラダマンティスの支配地だから、治安もバッチリ。のんびりした良いトコだぜ〜」
貴方「はぁ〜良いっすね〜楽園♪ 毎日、バカンス気分でボケちゃいそう〜」
ヘル「ハハ、その点も心配なしさ。エリュシオンの住人は、好きなときに生まれ変われる…っていう特典もあるから。忘却の河・レテの水を飲んで、過去の記憶を一切忘れ去ることで、新しく生まれ変われるんだ(※5)。……っと、そういや君は、既に天界に行って来たんだっけな? せっかくの観光、楽園続きじゃ芸がないかぁ…」
虚空を見上げ、端正な顔を にや〜っとほころばせるヘルメス。
ヘル「フッフッフ…… 平和なエリュシオンはまたの機会。やっぱ、旅ってのは刺激がないとな〜!」
貴方「い!? 怖いところは勘弁して下さいよ〜!」
ヘル「ハハハ、露骨に嫌そうな顔しなさんなって! お察しの通り、次に行くのは、悪人共が死後に行き着く場所『タルタロス』。君らが言うところの『ジ・ゴ・ク♪』ってやつさ〜!!」
貴方「もう化け物うじゃうじゃは勘弁ですって〜!(泣 ←「冥界その6」でケルベロスに じゃれつかれ、ヨダレまみれになった)」
ヘル「大丈夫大丈夫、ケルベロスはもういないから。なぁに、俺と一緒なら心配ないさ。姿隠しの帽子もあるしね! なんならもう被っとく?」
不安げな貴方にスッポリ帽子をかぶせるや、地表に向かって急降下をはじめるヘルメス。
ヘル「ちゃんと掴まっててくれよ〜! 長〜い洞窟に突っ込むぜ〜」
言うなり、地面にぽっかり口を開けた深い穴に飛び込むヘルメス。
暗闇の中―― 楽しそうなヘルメスの鼻歌を聞きながら、次週に続くのであった……。
※1 エリュシオンは、世界の西の果てにあるという説と、冥界の一部であるという説がある。
冥界(地下)バージョンでは、エリュシオンの地には専用の太陽や星があり、美しい紫色に包まれているんだとか……。
今回は、冥界の支配地だけど、西の果て付近にある……というイメージで書いてます〜(いい加減 ^^;)。
※2 トロイア戦争の英雄。唯一の弱点である踵(かかと)を射られて死んでしまう。詳しくはまた〜。
※3 神と人間の子である英雄ヘラクレスは、死後、彼の中の神の部分だけが天界に召され、残った人間の部分は冥界に入ったんだそーな(なんか強引〜)。
※4 オルフェウスの回参照。
※5 エリュシオンにずっと留まれる者は限られていて、ほとんどは一定期間エリュシオンで過ごした後、生まれ変わる…ともいわれる。
また、アスポデロスの野(普通の亡者達が行くトコ)の亡者達も、アスポデロスで過ごした後、エリュシオンに入って再び生まれ変わる…とする説もある。
諸説紛々なので、アバウトに流してやってください〜。
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