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▼ 名物スポットにいらっしゃ〜い♪(その12)

 暗いのは地下だから! ―― 冥界 その9


 愛の女神アフロディテの暇つぶし企画「神話世界一周旅行」に付き合わされるハメになった貴方。
 神々の伝令役ヘルメス神の案内で、今週も冥界観光に行ってみよ〜!

 冥界のさらに地下深く…… 生前に悪事を成した亡者達が送られる地「タルタロス」への潜入に成功した貴方とヘルメス。
 周囲の暗〜く重苦しい雰囲気に緊張気味の貴方とは対照的に、ヘルメスはご機嫌に鼻歌を歌っている。

ヘル「取り急ぎ、有名どころをぐるりと回っちまおうぜ! でもって、フッフッフ……」
貴方(嫌な予感…… −−;)

ヘル「タルタロスの最奥部に閉じこめられてる、先代の天界の首脳陣!(※1) 見てみたいと思わないかい? こんなとこまで来るチャンス滅多にないからさ〜! あ、嫌なら俺だけで行くから心配ないぜ。幸い、姿隠しの帽子もあるし、ちょちょ〜いと♪」

 ヘルメスは(姿隠しの帽子の効力で)透明人間化している貴方にウィンクすると、本来の仕事を思い出したように、コホンと咳払いをした。

ヘル「まぁ、いろんな悪い奴らが、ここタルタロスに落とされるわけだけど、特にあれだな、神々に逆らった奴らのお仕置き! 本人達にゃ気の毒だが、なかなか凝ってて見ものなんだよな〜」

貴方「あれ? あそこ、女の人達が大勢集まってるのは?」

 眼下に広がる薄暗い大地に目をやると、若い娘達が寄り集まって、何かの作業をしているのが見える。

ヘル「ああ、あれは『ダナオスの娘』達だ。50人姉妹なんだぜ」

貴方「ごじゅ… うわ、子だくさん!」

ヘル「ははは、なんと彼女達の婚約者も50人兄弟さ! 父親であるダナオスには双子の弟がいてさ、そいつが自分の50人の息子らと彼女達を結婚させることで、兄であるダナオスの国を奪い取ろうとしたんだ。武力にものをいわせて無理矢理ね。ところが彼女達も負けちゃいない。父親に命令されたとおり、大人しく従う振りをして、それぞれの結婚相手を殺しちゃったんだよね(※2)。……で、その罰として、死後にここに送られて、『ふるい』で水を汲み続ける…ってな仕事をさせられてるわけ…」

貴方「うあ〜 精神的にまいりそう〜(けど、井戸端会議にならないところがエライかも〜)」

ヘル「ははは、地味〜に陰湿な罰が多いんだよな、ここって。ほら、そろそろ見えてくる、あそこの小川」

貴方「へぇ、綺麗な水〜。それに周りの木には美味しそうな果実がいっぱい……」

 ヘルメスは速度を落とすと、そっと木陰に降り立った。

ヘル「小川の中に人がいるのが分かるかい?」

 ヘルメスの指さす先を見ると、一人の男が首まで小川に浸かっている。

ヘル「あいつは『タンタロス』(タルタロスじゃないぜ〜)。人間だけど、ゼウスの息子ってことで、神々の仲間入りを許されていたんだ。ところが、奴は『神は全てを見通すことが出来るのか?』なんてことが気になったみたいでさ。神々を食事に招くと、一人息子を殺して肉入りシチューを作り、食卓に出したんだ……。ま、すぐにバレたんだけど、神を試したってことで、罰としてここへ送られたんだ……(※3)」

貴方「息子殺しの罰じゃないんですか…!?(なんで)」

ヘル「はっはっは、息子はすぐに蘇らせたからね。それより、見てな……」

 なんと…… タンタロスが水を飲もうと小川に口を付けようとしたとたん、川の水が一瞬で干上がってしまったではないか。
 そして同様に、頭上に実った果物に手を伸ばすと、枝が遠のいていく……。

ヘル「わかったかい、タンタロスに与えられた罰が…? 奴はこうして、永遠の飢えと渇きに苦しまねばならないんだ……」

 ヘルメスは宣告するように言ったかと思うと、見えないはずの貴方の腕をわし掴んで再び宙に舞い上がった。

ヘル「オイオイ、これくらいでダークな気分になってちゃ、もたないぜ〜? 何事もエンジョイ、エンジョイ! それじゃ、次、行っくぜ〜♪」

貴方「ぎゃぁああ、スピード出しすぎ〜〜!!」

 てなわけで、またもや半泣きで、次回へ続くのであった……。


 ※1 前回及び、クロノス&レアーの回参照〜!


 ※2 長女だけが、父の命令に背いてムコ殿(相思相愛?)を逃がした。
    後に長女の夫が、残りの姉妹49人を殺して、彼女ら(49人)
    はタルタロス送りとなった。

    似たようなものですが、「ふるい」ではなく「底に穴の空いた
    壺」で水を汲む…説。底の抜けた壺に水を「ためる」説…等も
    あるようです〜。

 ※3 タンタロスの回参照〜。


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